写経だけじゃ足りない!“リファクタリング思考”を身につける

〜コードを「動かす」から「育てる」へ〜

写経は“入り口”であって“ゴール”ではない

プログラミング学習を始めたばかりの人がよく取り組む学習法に「写経(しゃきょう)」があります。
チュートリアルや書籍のサンプルコードをそのまま書き写し、動かしてみる。
これは、初心者にとって非常に有効な第一歩です。
「コードを書く感覚」を体に染み込ませることができるからです。

しかし、多くの人がある段階で壁にぶつかります。
それは、「写経しても理解が浅い」「自分のコードになる気がしない」という感覚。
なぜでしょうか?
答えは、“リファクタリング思考”が欠けているからです。

写経が抱える3つの限界

① 「動く」ことが目的化してしまう

写経は「動作確認」で満足してしまいがちです。
コードが動いた瞬間、「理解した気」になりますが、実際には“コピーしただけ”に過ぎません。
なぜ動くのかなぜその書き方なのかを掘り下げない限り、本質的な理解にはつながりません。

② 他人の思考をなぞるだけ

写経は他人のロジックを「追う」練習です。
しかし、実務で求められるのは「自分の判断で最適解を導く力」。
つまり、思考の再構築力です。
写経だけでは、コードの“設計意図”や“改善の選択肢”を学ぶことはできません。

③ 応用力が育ちにくい

チュートリアル通りのコードは完璧に書けても、
少し仕様を変えられた途端に対応できなくなる。
これは「理解」ではなく「模倣」にとどまっているサインです。
ここで必要になるのが、“リファクタリング思考”なのです。

リファクタリング思考とは何か?

リファクタリングとは、
「外部的な動作を変えずに、内部構造を改善すること」です。
しかし、単なる“コードの掃除”ではありません。
リファクタリングの本質は、コードを通して思考を磨くことにあります。

リファクタリング思考の3つの要素

  1. 構造を理解する力
     どこが重複していて、どこを共通化すべきかを見抜く。
  2. 意図を読み取る力
     「なぜこう書かれているのか?」という設計者の考えを推測する。
  3. 改善の仮説を立てる力
     「この処理を関数化したらどう変わるか?」と仮説を立てて検証する。

この3つを繰り返すうちに、コードを見る目が鍛えられます。
つまり、リファクタリング思考とはコードを通して思考を言語化する訓練なのです。

写経の次にやるべき“リファクタリング練習法”

ここからは、具体的にどうすればリファクタリング思考を鍛えられるかを解説します。

ステップ①:写経したコードを「一晩寝かせて」読み直す

学習直後は、コードがまだ“自分のもの”になっていません。
翌日、冷静に見返してみると「冗長な部分」や「意味が分からない変数名」が見えてきます。
この“違和感”を大切にしましょう。
それこそがリファクタリングの出発点です。

ステップ②:「もし自分がこのコードをレビューするなら?」と考える

第三者の目で自分のコードを見てみると、
「変数名が抽象的すぎる」「処理が長すぎる」などの改善点に気づきます。
レビュー視点を持つことで、コードの可読性と意図の伝達力が向上します。

ステップ③:同じ動作を“別の書き方”で書き直してみる

たとえば、以下のような変換を練習してみましょう。

// before
for (let i = 0; i < items.length; i++) {
  total += items[i].price;
}

// after
const total = items.reduce((sum, item) => sum + item.price, 0);

機能は同じでも、書き方・発想が違います。
こうした「同義表現」を比較することで、書く力よりも“考える力”が伸びます。

リファクタリングで身につく“設計の目”

リファクタリングを意識してコードを読むと、
自然と「良い設計とは何か?」が見えてきます。

① 再利用性を意識する

「この関数、他でも使えるのでは?」と気づくことで、
コードの再利用設計を考える習慣がつきます。
これは中級者への大きなステップです。

② 責務分離を考える

「この関数、やっていること多すぎない?」
と気づいたら、それは“責務分離”の意識が芽生えた証拠。
複数の責任をもつ関数を分解することで、
保守性が高まり、チーム開発にも強くなります。

③ 命名の重要性を理解する

リファクタリングを重ねると、
「変数名ひとつで可読性が変わる」ことを体感します。
data1, data2 ではなく、
userList, filteredUsers といった具体的な命名にするだけで、
コードの“意図”が伝わるようになります。

リファクタリング思考を育てる学習サイクル

Step 1:読む

他人のコードを読む。GitHubやQiitaなどで実例に触れる。

Step 2:真似る(写経)

実際に動かしてみて、理解を確認する。

Step 3:変える

同じ動作を、自分なりの構造で書き直してみる。

Step 4:改善点を探す

どの書き方が読みやすいか、どこを共通化できるかを検討する。

Step 5:他人に説明する

「なぜこう書いたのか」を言語化することで、思考が整理される。

この5ステップを繰り返すことで、
“コードを動かす”から“コードを設計する”へと成長できます。

実践で役立つ「リファクタリング思考チェックリスト」

観点自問する質問意図
冗長性同じ処理を2回以上書いていないか?繰り返しの排除
責務1つの関数で複数の役割を持っていないか?単一責任原則
命名名前を見ただけで役割が分かるか?可読性の向上
構造コードの流れが論理的に整理されているか?保守性の向上
意図「なぜこう書いたのか」を説明できるか?設計意識の明確化

これらの質問に即答できるようになると、
あなたのコードは“動くだけのコード”から“伝わるコード”へ変わります。

リファクタリング思考がキャリアを変える

リファクタリング思考を持つ人は、単に「動くもの」を作るだけではありません。
より良く動く仕組みを作ることができます。
この違いが、ジュニアエンジニアとリードエンジニアの差を生むのです。

  • バグの原因を迅速に突き止められる
  • 新機能の追加に柔軟に対応できる
  • チームで共有しやすいコードを書く

これらはすべて「改善思考」から生まれます。
つまり、リファクタリングとは単なる技術ではなく、
エンジニアとしての思考スタイルそのものなのです。

まとめ:動くコードから、成長するコードへ

写経は、プログラミング学習の入口。
しかし、成長を加速させるのは“リファクタリング思考”です。

  • ただ動かすのではなく、意味を考える
  • 他人の意図を読み取り、自分なりに改善する
  • 「なぜ?」を繰り返して設計力を磨く

これを続けていけば、あなたのコードは「動く」だけでなく、「育つ」ようになります。

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