コードを“書く”より“読む”力を鍛える学習法
〜「速く書ける」より「深く理解する」エンジニアへ〜
はじめに:なぜ「読む力」が圧倒的に重要なのか
多くの初心者エンジニアや学習者は、プログラミングを「書く技術」だと考えています。
しかし実際の現場では、「書く時間」よりも「読む時間」の方が圧倒的に長いことが分かっています。
既存のコードを理解し、修正し、機能を追加する。
これが開発の大半を占めるからです。
コードを「書ける人」は多いですが、
コードを「読んで理解できる人」は意外と少ない。
そして後者こそが、プロジェクトを支える“本物の実力者”なのです。
読む力が生み出す3つのメリット
① バグ修正やリファクタリングが速くなる
「読む力」があると、コードの意図や構造をすぐに掴めるため、
問題箇所の特定が早くなります。
特に大規模なシステムでは、他人が書いたコードを理解するスピードが開発効率に直結します。
② チーム開発で信頼される
他人のコードを正確に理解できる人は、
レビューや議論でも的確なフィードバックができるため、
チーム全体の品質向上に貢献できます。
結果として、エンジニア間での信頼関係が生まれます。
③ コードの「美しさ」を判断できるようになる
読む力を鍛えると、「良いコード」と「悪いコード」の違いが感覚的に分かります。
それは、たくさんの“良質な作品”に触れたデザイナーが
センスを磨くのと同じ理屈です。
書く前に「読む」ことで伸びる理由
初心者が最初にやりがちなのが、いきなり自分で書こうとすることです。
確かに“手を動かす”ことは大事ですが、
土台となる知識がないまま書くと「なんとなく動くけど意味が分からない」状態になりがちです。
たとえば、HTML・CSSの初学者が
いきなりLP(ランディングページ)を作ろうとしても、
きれいに組めず「なぜ崩れるのか」が分からない。
しかし、他人のコードを読む練習をしていれば話は別です。
構造・命名・コメントの書き方など、
実践的な「お手本」が自然と頭に残ります。
読むことで得られる“暗黙知”
- 関数の分割の仕方
- 命名の一貫性
- エラー処理の考え方
- ファイル構成や責務の分け方
こうしたノウハウは、教科書には載っていません。
しかし実際のコードを読むことで「体で覚える」ことができます。
「読む力」を鍛えるステップバイステップ学習法
ここからは、今日から実践できる学習法を紹介します。
ステップ①:GitHubで“お手本コード”を読む
まずは興味のある分野(例:Web制作・AI・ゲームなど)の人気リポジトリを探してみましょう。
たとえば「Todoアプリ」「ブログCMS」「APIサンプル」など、実用的な小規模プロジェクトが最適です。
読むときのポイントは以下の通りです
- READMEから構造をつかむ
→ どんな目的のコードなのかを理解する。 - main.js / index.php などのエントリーポイントを見る
→ 処理の流れを頭の中で追う。 - コメントや関数名から「作者の意図」を読み取る
→ 「なぜこの書き方をしているのか?」を意識。
たとえ最初は完全に理解できなくても構いません。
「この部分は何をしているんだろう?」という疑問メモを残すことが大切です。
それが後の学びにつながります。
ステップ②:リファレンスコードと自分のコードを“見比べる”
次の段階は、比較する力を養うこと。
たとえば自分が書いた関数と、他のエンジニアが書いた同様の処理を比べてみましょう。
- どちらが読みやすいか?
- 命名は論理的か?
- 冗長な部分はないか?
- 変数のスコープや責務が整理されているか?
この“比較読解”を続けることで、自然とリファクタリングのセンスが磨かれます。
ステップ③:コードリーディング勉強会やレビュー会に参加する
独学よりも効果的なのが、他人と読むことです。
最近ではオンラインでも「コードリーディング勉強会」や「Pull Requestレビュー練習会」などが増えています。
自分が読んだ解釈を言語化し、他人の視点を聞くことで理解が深まります。
また、質問されることで曖昧な部分が明確になり、“説明できる理解”が身につきます。
ステップ④:ドキュメントを読む習慣をつける
コードだけでなく、公式ドキュメントやライブラリの仕様書を読むのも重要です。
最初は難しく感じますが、慣れると「仕様を読む力」がつき、新しい技術に強くなります。
おすすめの練習法は以下の通りです
- 毎日10分、気になるライブラリのREADMEを読む
- Stack Overflowでの「ベストアンサー」のコードを解説してみる
- 新しいフレームワークを触る前に、必ずQuick Startを全文読む
“読む力”は一朝一夕では身につきませんが、毎日少しずつ読む習慣が大きな差を生みます。
読む力を支える「心構え」と「読む技術」
① すぐに理解しようとしない
難しいコードに出会ったとき、「分からない=自分がダメ」と感じる必要はありません。
分からないコードは、自分がまだ触れていない知識の宝庫です。
焦らず、一行ずつ「これは何をしている?」と問いながら進めましょう。
② 流れを追うために“仮説”を立てる
コードを読むときは、「おそらくこう動いているのでは?」という仮説を立てながら読み進めます。
そして実行結果を確認して、正誤を検証する。
この「仮説検証のループ」が、理解を深める最短ルートです。
③ “動かして読む”で理解を定着させる
単に読むだけでなく、手元で実際にコードを動かしながら読むのも効果的です。
ブレークポイントを置いたり、console.log() や var_dump() で
変数の中身を確認しながら追うと、“コードの呼吸”が見えるようになります。
読む力を伸ばすためのおすすめツール・習慣
- VSCodeの「Go to Definition」や「Find All References」でコードの流れを追う
- GitLens拡張機能で「誰がどこを変更したか」を把握する
- ChatGPTやCopilotで「この関数の役割を説明して」と質問する
- 日々の学習ログに“読んだコード量”を記録する
「行数」よりも「理解した内容」を記録すると、
自分の成長が可視化できます。
第6章:読む力が結果的に“書く力”を強くする
最終的に、「読む力」は“書く力”へとつながります。
読んだ経験が多ければ多いほど、
脳内に「良いコードの辞書」ができるからです。
結果として、書くときに迷わず、エラーの原因も直感的に見抜けるようになります。
つまり、「読む力」=「思考の基礎体力」なのです。
まとめ:まずは“1日1ファイル”から始めよう
プログラミングはスポーツに似ています。
フォームを磨くには、先人のプレイを観察するのが一番早い。
今日から、1日1つで構いません。
GitHubの小さなプロジェクトを開き、「このコードは何をしているのか?」
と自分の言葉で説明してみましょう。
たとえ10分でも、“読む習慣”を積み重ねた人だけが、本当に強いエンジニアになっていきます。
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