デザインとコードの間にある“翻訳力”を磨こう

「再現できる」から「価値を生み出せる」Web制作者へ

なぜ「翻訳力」がこれほど重要なのか?

Web制作の現場で、こんな経験はありませんか?

  • Figmaどおりに実装したのに「なんか違う」と言われる
  • 数値は完全一致しているのに、デザインの印象がズレる
  • デザイナーと話が噛み合わない
  • WordPress化した途端、デザインが破綻する
  • レスポンシブ対応で一気に崩れる

こうした問題が起きるたびに、多くの人はこう考えます。

「もっとCSSがうまくなれば解決するはず」
「JavaScriptの知識が足りないのかも」

しかし、実務を重ねるほど気づくはずです。
問題の本質は“技術不足”ではないと。

実はこれらの原因の多くは、

デザインとコードをつなぐ“翻訳力”の不足

にあります。

デザインとコードは、同じゴールを目指していながら、
まったく違う言語で世界を表現しています

  • デザイン:視覚・感覚・印象・意図
  • コード:構造・ルール・再利用・可変性

この2つの間を正しく行き来できる人こそ、
現場で「信頼されるWeb制作者」になります。

この記事では、
デザインとコードの間にある“翻訳力”とは何か
なぜAI時代にさらに重要になるのか
どうすれば実務レベルで鍛えられるのか

を、具体例とともに徹底解説します。

翻訳力とは「写す力」ではない

まず大前提として押さえたいのは、

翻訳力 = デザインをそのまま再現する力
ではない

ということです。

■ 翻訳の本質は「意味を保った変換」

言語の翻訳を想像してみてください。

英語の文章を、日本語に直訳すると不自然になりますよね。
大事なのは「意味」や「ニュアンス」を保った表現です。

Web制作でも同じです。

  • Figmaの余白:32px
  • 実装でも32px

これは一見正解ですが、必ずしも最適解ではありません

なぜなら、

  • ブラウザごとのフォント描画差
  • 行間・文字詰め
  • 画面サイズの違い
  • コンテンツ量の増減

によって、同じ数値でも見え方が変わるからです。

翻訳力とは、

数値を合わせる力ではなく
体験・印象・意図を保ったままコードに落とす力

なのです。

翻訳力がないと起こる「実案件あるある」

翻訳力が不足していると、現場で次のような問題が頻発します。

① 数値は合っているのに「違和感がある」

Figmaを見ながら一つひとつ数値を拾って実装。
でも完成後に言われる一言。

「あれ…なんか違う」

これはよくある話です。

原因は、デザイン全体のルールを読めていないこと。

デザインは「点」ではなく「面」で成立しています。

  • 余白のリズム
  • 見出しと本文の関係
  • セクション間の緊張感

これらを無視して数値だけを写すと、
「正しいけど気持ち悪い」実装になります。

② div地獄に陥る

見た目を再現しようとするあまり、

<div class="box">
  <div class="inner">
    <div class="title-wrap">
      <div class="title">タイトル</div>
    </div>
  </div>
</div>

のような構造になっていませんか?

翻訳力が高い人は、まず意味構造を考えます。

<article>
  <h2>タイトル</h2>
  <p>説明文</p>
</article>

構造が整理されていない実装は、

  • 保守が大変
  • WordPress化で詰む
  • SEO・アクセシビリティに弱い

と、後から必ず苦しむことになります。

③ レスポンシブで破綻する

PCでは完璧なのに、
SPで一気に崩れる。

これは翻訳力不足の典型です。

  • 固定幅・固定高さ
  • absolute依存
  • 文字量変化を考えていない

デザインでは成立していても、
コードでは“可変”が前提になります。

④ デザイナーとの認識ズレ

  • デザイナー「ここは余白広めで」
  • コーダー「余白が広すぎたので詰めました」

これは、デザイン意図が翻訳されていない証拠。

翻訳力があれば、

「この余白は“強調”のため」
「ここは“余白もデザインの一部”」

と理解した上で実装できます。

翻訳力を構成する4つの力

翻訳力は「センス」ではありません。
明確に分解できます。

① 意図を読む力(読解力)

デザインを見るとき、こう問いかけていますか?

  • なぜこの余白は広い?
  • なぜこの色だけ強い?
  • なぜこの順番?
  • なぜここに視線誘導がある?

翻訳力が高い人は、
デザインを“答え”ではなく“問い”として見る習慣があります。

② 構造に落とす力(HTML設計力)

Figmaは「絵」ではなく、
情報設計の結果です。

カードUIなら、

  • article
  • 見出し
  • 本文
  • メタ情報

という意味構造があるはず。

<article class="card">
  <h3 class="card__title">タイトル</h3>
  <p class="card__text">説明文</p>
</article>

これが翻訳です。

③ ルールを抽出する力(CSS設計力)

デザインには必ず共通ルールがあります。

  • 余白は8px刻み
  • 角丸は12px
  • 影は2パターン
  • 色は5色以内

これをコードに翻訳すると、

:root {
  --space-1: 8px;
  --space-2: 16px;
  --radius: 12px;
}

となります。

翻訳力が高い人ほど、
「個別指定」より「仕組み化」を選びます。

④ 妥協点を判断する力(実務判断力)

実案件では、必ずズレが起きます。

  • テキストが増える
  • 画像が足りない
  • フォントが違う
  • CMSで自動改行される

このとき重要なのは、

どこを守り、どこを崩すか

を判断できること。

翻訳力とは、
「完全再現」ではなく「最適化」の力です。

AI時代に翻訳力がさらに重要になる理由

AI(ChatGPT / Copilot など)は、

  • コードを書く
  • 雛形を作る
  • 動くものを出す

ことが得意です。

しかしAIは、

  • デザイン意図
  • クライアントの背景
  • 運用後の未来

を理解できません。

だからこそ、

AIが書いたコードを“翻訳・調整”できる人

の価値が一気に上がっています。

AI時代の役割分担はこうです。

  • AI:作業・生成
  • 人間:判断・翻訳・最適化

翻訳力は、AI時代のコーダーの武器です。

翻訳力を鍛える実践的トレーニング

① 言語化しながら模写する

模写時に必ず考えます。

  • この余白のルールは?
  • コンポーネントは何種類?
  • 状態変化は?

「なぜ?」を言語化するだけで、翻訳力は伸びます。

② 作った後に必ずリファクタする

  • class名を整理
  • 共通化
  • CSS変数化
  • 無駄なdiv削除

この「仕上げ」が翻訳力を育てます。

③ 自分のコードを説明できるかチェック

  • なぜこの構造?
  • なぜこのCSS設計?

説明できない部分は、翻訳が甘い部分です。

④ AIをレビュー役として使う

  • 「このHTML構造は適切?」
  • 「改善できる点は?」

AIを“先生”にすると、成長が加速します。

翻訳力がある人が現場で評価される理由

翻訳力がある人は、

  • 修正が少ない
  • デザイナーとスムーズ
  • WordPress化しても壊れない
  • 運用に強い
  • チームが安心する

つまり、

信頼される実装ができる人

です。

翻訳力はWeb制作者の「本当の武器」

デザインとコードは、別の言語。
だからこそ必要なのが翻訳力。

  • 写すのではなく、意味を保つ
  • 数値ではなく、体験を守る
  • 完璧再現ではなく、最適化

この力があるだけで、
あなたのWeb制作は一段階上に進みます。

そしてAI時代こそ、

翻訳できるWeb制作者は、確実に価値が上がる

これは断言できます。